宮下奈都さん「羊と鋼の森」

高校2年の僕が、調律師の板鳥さんのピアノの音、ピアノの森の匂い、ピアニストを目指すふたごの女子高生と出会い、調律師として成長していく話です。

調律師さんが、明るい音・やわらかい音・澄んだ音・華やかな音・馥郁(ふくいく)たる音・・・にするためにこんなに心を尽くしているとは、この本を読むまでまったく知りませんでした。

「音楽の感動を文字で表現すること」は、とても難しいことのように思えますが、この本はたくさんの美しい言葉で満たされています。

 

・p19「ピアノに出会うまで、美しいものに気づかずにいた。知らなかった、というのとは少し違う。僕はたくさん知っていた。ただ、知っていることに気づかずにいたのだ。」

 

・p57「明るく静かに澄んで懐かしい。甘えているようで、きびしく深いものを湛えている。夢のように美しいが現実のようにたしかな音。それが、板鳥さんの作りだす音だ。僕の世界を変えた音だ。」

 

・p92「一瞬の静寂の後、ピアノが鳴り出す。途端に、席のことなど吹き飛んだ。美しかった。圧倒的に美しかった。ピアノが、音色が、音楽が。何が美しいのかもわからなくなってしまう。ただ、ステージの上の黒い森から美しいものが溢れ出してホールを満たした。」

 

・p165「どうして、ピアニストをあきらめようと思ったんですか」「耳がよかったからだよ」「僕の耳はよかった。僕の耳は、一流のピアニストが弾くピアノと自分のピアノがまったく別のものであることをよく知っていた。」

 

・p238「ごく自然にたった一音弾いただけで、よろこびも悲しみも表現することができる。派手じゃなくて、静かで、でも粒子が細かいから胸にすっと沁みてくる。そこで消えずに、いつまでも胸にのこる。そうして、胸の内側のどこかをコンコンとノックしてくるのだ。」

 

朝活クラシック

ちょうどこの本を読んでいるときに、ピアニストの中沖いくこさんヴァイオリニストの藤田千穂さん朝活クラシック(朝活@富山)に参加しました。

「この音を文字で表現すると、どんな言葉になるだろう」、「共感覚を持っている人だと、どんな風に音が見えるんだろう」と考えながら、美しい音色を楽しみました。

image

そして、ヴァイオリン体験までさせていただきました!

丁寧に楽器を扱い、弦1本1本に集中することを心がけたところ、何とか音が出ました。

つたない私の音にお二人が合わせてくださり、曲になったときはとても感動しました。

聴く・弾く両方から音楽を楽しむことができ、本当に贅沢な体験でした。

 

羊と鋼の森

羊と鋼の森

posted with amazlet at 16.08.30
宮下 奈都
文藝春秋
売り上げランキング: 648